零れ落ちる太陽の雫と俺たちの灼熱

 で、半ばムリヤリに連れて来られたこの場所で、永井は壁に押し付けられ背中側から伊勢に股間をまさぐられていた。
  「…おい。どーゆーことだ、伊勢?」
  「分かれ」
  「分かるけど、なんで“今”なんだって聞いてる」
  「しゃーねーじゃん。今したくなったんだからよ」
 分かるような分からないような理由で、強引に導かれていく永井のカラダ。ジワジワと、だけど確実に伊勢に応えようとしている。
  「大丈夫だよ、ここには誰も来ねえって…」
 悪い男の囁きが、耳元で聞こえる。ココには誰も来ないという自信がどうしてあるのだろうかと、永井は壁に爪を立てて考えていた。以前にもココで、自分以外の誰かとこういうコトをしたことがあるのか?
  「…っ」
 伊勢が準備OKな自身を永井の腰に擦り付けてくる。伊勢の熱い息遣いがうなじにかかる。


 廊下を歩いてたら、真正面から飛び込んできて抱きつかれてキスされた。わけのわからないうちに腕を引っ張られて、今ではズボンと下着を太もものあたりまで下げられている。もちろん、永井の分身は伊勢に上下に扱かれ、彼の手のひらの中で悦びに打ち震えているのだ。
  「や、…やめろ。扱くな」
  「じゃ、もう挿れていい?」
 言うが早いか、すでに伊勢はすっかり勃ち上がった自身を永井の双丘にくっつけて、今にも割って入るところだった。
  「あっ、おいっ、まだ…」
 伊勢はグイと強引に秘所に押し付け、自分の先走りをそこに塗りつけた。指で入り口を拡げて、無理に先っぽだけ挿入した。
  「あぁぁーーっ!…っ」
  「オイこら、声がデカイ」
 痛みに叫んだ永井の口を片手で塞ぎ、伊勢は腰を進めようとした。解されることなく挿入されたものだから、永井のカラダは当然拒む。ぎゅうと入り口に力が入り、伊勢は先端を挿れただけでぽんと勢いよく押し出されてしまった。
  「うぉっ」
 しかし、これがどうやら気持ちよかったみたいで、伊勢は何度も何度も同じように、先端だけ永井の中に入れては出し、出しては入れるを繰り返し、茎のくびれた部分を引っ掛けて楽しんでいた。
 そうしてる間に、永井の方もだんだんと馴染んでくる。もっと中へ入って来て欲しい。永井の前は、窪んだ部分に露が結ばれ、張り詰めてきている。口を塞ぐ伊勢の指を唇の中に誘い入れ、チュ…と音を立てて吸った。
  「…なんだ?おねだりか?」
  「遊んでないで、ヤるなら早く…挿れろよ」
 肩越しに伊勢を見つめ、悔しいけれど強請るようなセリフを口にした。
  「そうこなくちゃ」
 にやりと伊勢は笑い、今までチュポチュポといやらしい音をたてて先端だけ出し入れしていたのを、思い切り奥まで突き刺した。
  「…っ!」
  「くっ…はぁ…っ、気持ちい〜…」
 “キモチイイ”という言葉どおり、伊勢のものは永井の中でさらに膨れあがった。欲しかったものが欲しい場所に届き、永井もまた快感に酔いしれていた。
 程なく伊勢は腰を動かし、根元まで突っ込んでは先端まで抜くを繰り返した。永井もその律動に合わせ、体を揺すられていた。前立腺を擦られ、嫌が応にも射精を促されると、永井は自身を手のひらで包み込むようにして、白濁を受け止めた。
  「射精る…っ」
 ほぼ同時に伊勢は小さく言うと、永井の中に入ったまま欲望を吐き出した。


  「な、どうして…」
 息を整えながら声を絞り出し、永井は伊勢に問いかける。
  「どうして、俺に…こんなことをするんだ?」
  「…好きだからに、決まってんだろ…」
 ズルリと自身を抜きながら、伊勢は答える。ありふれた答えだけれども、悪い男の常套句だけれども、今はこの非生産的な行為を肯定できるのであれば、それでいいと永井は思う。
 指の間から零れ落ちるそれと、太ももを伝うそれは哀しいほど同じ温度だった。

(07.2.22)



おわり


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