放課後、独占欲。

 誰もいない放課後の教室。遠くから聞こえてくる部活の掛け声。風に翻る白いカーテンに隠れて抱きしめた恋人。好きで好きでどうしようもない人。








  「あ…こ、こら…やめ…っ」
  「やだ、やめない」
 伊勢は永井の制服を乱しながら、何度も唇をついばむ。永井の髪を撫でるように梳き、首筋あたりで息をすぅーっと吸い込んだ。


 永井の匂いが好き。


  「あっ…ちょっ…」
  「何?感じた?」
 クスクスと余裕ありげに笑う伊勢を見て、永井は伊勢の背中を軽く叩いた。
  「じゃ、これは?」
 伊勢は膝で永井の股間をなで上げた。
  「…っ」
 顔を真っ赤にした永井を見て、伊勢はまた2、3度膝を往復させた。伊勢の腕を掴む永井の指に、また少し力が込められる。
  「ほっほんと、もうやめてくれ。誰か来たらどうす…んっ」
 永井の言葉を、伊勢は唇を塞いで遮る。キスしながらしゅるっと永井のネクタイを首から抜くと、伊勢は言った。
  「こんななってるくせに、やめたいなんて嘘くせえよ。…気になるなら、周りが見えないように目隠ししてやろうか」
  「そ…っ、んなこと…、い、伊勢っ」
 抵抗する永井に手を焼いて、伊勢は一旦諦めたかのように見えたが、何か思いついたのか急に永井の手を取った。その手を後ろ手にすると、目隠ししようとしていた永井のネクタイでくくり始めたのだ。
  「伊勢っ」
  「あーもうちょっと黙って」
 両手をくくり終えると右手を永井の後頭部にやり、引き寄せて深い角度で口付ける。伊勢の舌は永井の唇を割り、舌をつつき緩く吸い上げ絡めあう。何度も角度を変え永井の唇を味わった。そのたびにお互いの唇からは艶めかしい濡れた音が零れていた。


 このキスが挨拶か前戯か、もうわかるだろ?


 キスだけでだいぶ感じてしまったのか、永井は体重を伊勢に預けてきた。伊勢はそんな永井を抱きかかえるようにして、机の上に導き座らせる。さっき緩めておいたベルトはすぐに外れて、黒のボクサーパンツごと永井のズボンを下ろした。勢いよく永井の分身は顔を出した。
  「…もう欲しくて仕方なかったんじゃね?」
 伊勢はすっかりカタチを変えたそれを見て、ごくりと喉を鳴らし、人差し指と中指を永井の口に突っ込んだ。反対の手で、天を向いて勃ち上がる永井の分身を柔らかく握りこんだ。
  「わーなんか、今日スゴく感じてない?」
 永井の先端に露を結んでいた透明の液体は、伊勢の言葉を合図にしたように零れ、茎を伝い落ちた。伊勢はそのぬめりを先端に塗りつけるように手のひらでこね回した。
  「ふ、ぁ…、…え……」
  「えっ?」
 何か永井が言ったが指が入っていたためちゃんとしゃべれなかった。伊勢は永井の口から指を抜き、もう一度聞く。
  「ん?どした?何って言った?」
  「…も、入れ、て……」
  「…誰か来てもいいの?」
  「ぅ……」
  「嘘、だって」
 伊勢はくうるりと永井の体勢を変えさせて、机に伏せさせた。さっきまで口の中をかき回していた指が唾液で濡れている事を確認すると、その指を永井の蕾へとあてがう。
  「ふぁ…っ」
  「おい、まだ入ってないんだぜ?」
 体の跳ねた永井を見て、伊勢は揶揄するように言った。
 1本、そして2本と指を増やすごとに永井の息遣いは荒くなり、堪えきれないのか腰が揺れ始めた。
  「あーオレももうたまんねえ」
 伊勢は言うと、ポケットから小さい正方形の袋を取り出した。袋の端を歯で噛んでピリリと破き「こんな場所だし使うぜ」と律儀に断った。
 指を抜くと永井は咎めるような切ない声を出す。
  「そんな声出さなくてもすぐにあげるよ。力抜いて…」
 伊勢は永井の双丘を割り入り口を指で拡げると、自身をゆっくりと侵入させた。狭い永井の径はうごめいて、入れるだけで達ってしまいそうになる。一番太い部分を入れてしまうと、その後は一気に奥まで突き上げた。
  「ぁぁぁぁぁー…っ」
 精一杯声を殺して、永井が快楽の声を上げる。伊勢は永井の腰を持ち、男なら誰でも一番感じるアノ場所を探った。


 好き。永井大好き。


 入り口近くまで引き抜き、先端だけ残してまた奥まで押し込む。引き抜かれるときに伊勢の茎のくびれたところが永井の内壁を擦った。激しい快感を覚えた永井の鈴口から堪え切れなかったものがあふれ、ぽとぽとと床に染みを作った。
  「も、イっていいよ…っ」
 伊勢も限界が近いのか切羽詰った声をかける。伊勢の切っ先が永井の前立腺を擦りあげる。
  「んっ…あぁぁぁーーっ…っ」
 伊勢の律動が早くなると、永井の体中に電流が走り抜けた。快楽の波に飲まれ、永井は甘い叫び声を上げて、伊勢に揺すられるまま勢いよく白い飛沫を吐き出した。


 吐精の後でぐったりとする永井の体に、伊勢は重なる。
  「永井ぃ…。好き」
  「…知ってる」
 窓に切り取られた空はもう、茜色になっていた。


(2006)



おわり

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